退位の書簡を認める発言
昭和天皇77歳のときの会見より
記者:今年の夏、米国のマッカーサー記念館で、昭和23年に陛下が田島長官を通じ、「退位せず」というご決意を表明された書簡が公表されました。
これはマッカーサー元帥が、陛下に退位されないようにお勧めしたことへの返事とされていますが、当時の御心境をお聞かせいただければうれしく思います。
天皇:その当時については、日本の復興のすみやかならんことを希望し、ひたすら国民生活が幸いとなることを願っていました。
今話されたような、田島長官が先方の希望によってそういうことを返事したということは記憶がありますが、指令官と会話したことについては、秘密を守るということを約束しましたから、信義の上、この問題については、話すことができないと思っています。
高橋紘『陛下、お尋ね申し上げます』(264ー265p)
陛下、お尋ね申し上げます―記者会見全記録と人間天皇の軌跡 高橋 紘 文藝春秋 1988-03 by G-Tools |
もしも一般人になったら
『ニューズウィーク』バーナード・クリッシャー東京支局長による訪米前のインタビュー
記者:陛下は一日でも一般の人になって、誰にもまったく気付かれず、皇居を抜け出し、気ままに振るまってみたいとお考えになったことはありませんか。仮に実現したら何をなさいますか。
天皇:心の奥底では、いつもそう願ってきました。おそらくマーク・トウェインの『王子と乞食』のようにね。もし、そのような願いがかなえられるなら、たぶん結末もこの物語と同じようになったでしょう。
高橋紘『陛下、お尋ね申し上げます』(214p)
陛下、お尋ね申し上げます―記者会見全記録と人間天皇の軌跡 高橋 紘 文藝春秋 1988-03 by G-Tools |
天皇の三谷隆信に対する辞意
この日、皇太子の15歳の誕生日。
そして、東条英機、土肥原賢二、広田弘毅、板垣征四郎、木村兵太郎、松井石根、武藤章の7人のA級戦犯が処刑される。
天皇一家は予定されていたすべての行事を取りやめ、服喪の一日を過ごす。
これは村井長正が田島道治から聞いたとされるもの
陛下:三谷、私は辞めたいと思う、三谷はどう思うか。
三谷:お上が、ご苦痛だと思し召すほうを、この際はお選びになるべきであります。お上がおいやになるほうを、ご苦痛と思われるほうを,お選びになるべきであります。
陛下:・・・・・・
橋本明「封印された天皇の「お詫び」」(鶴見俊輔・中川六平編『天皇百話』所収(712p))
天皇百話〈下の巻〉 鶴見 俊輔 中川 六平 筑摩書房 1989-04 by G-Tools |