マッカーサー、シーボルトの会話

マッカーサーの発言

「実は自分も天皇が退位を考えているのではないか、あるいは裁判判決による強い感情的緊張から、ひょっとして自殺さえ考えているのではないかと、心配していたところだ」

東京裁判の判決は、いわば一トン分のダイナマイトを爆発させるようなものだ。誰もそのあとに何が起こるか予見できない。天皇が判決の衝撃で一時的に判断力を失ってしまう怖れがある。だが天皇は退位を考慮しているとは思えないふしもある。噂はいいかげんなものだと信じたい。いずれにしても、そんなことになったら、ひどい政治的破綻となるから、なんとかしても食い止めねばならん。判決が終わったらすぐ、天皇と会見する予定になっているから、わたしの方からこの件を持ち出して、退位はきわめて愚かなことで、日本国民に対するこの上ない不親切行為だと言って、説得するつもりだ」

秦郁彦裕仁天皇五つの決断』(206p)

4062011271裕仁天皇五つの決断
秦 郁彦
講談社 1984-01

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