木下道雄、沼津御用邸にて

 沼津御用邸(西)にて昼食後一時間計り拝謁。
 一、呉竹寮組織変更の件御異議なし。
 二、夏冬の大宮様御用邸としては、沼津と軽井沢とあれば足る様に思われたり。冬の寒さが御困難にて、夏の暑さは苦に遊ばされず。台湾に住みたいと思ったとの御話ありし位、冬は暖地を選定すること必要の様なり。
 三、御退位のことにつきては、しかるべき時期を見て決行さるることを可とせらるるにあらずやと思わるる御言葉ありき。
 四、葉山への行幸啓のことを申上ぐ。

木下道雄『側近日誌』(174p)

4163442103側近日誌
木下 道雄
文藝春秋 1990-06

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