宮中の人事とGHQの意向

午後四時、総理官邸にて南原東大総長と会談。是非宮内府長官を引受けられたしと頼んだが、「自分は学園に終始する決心です」とて動かない。誰か適任はないかと尋ねたが「侍従長ならば高木八尺君がよいと思う」と言った。
 その後へ松平宮内府長官来訪。
「お上は当分現状維持で行きたい御考えで、更迭を延期する訳に行かぬかと仰せられる」との話。
 私はそれは宮中のために良くない、自分が悪者になりますと明瞭に答えた。そこで堀内君はどうだろうかと言ったら、堀内君はよいと思うとの返事だった。
 (中略)
 Husseyは宮中の経費が公私混同している、皇太后、両陛下、皇子皇女の侍者は三十人だけが内帑費で、残余は役人になっている。侍医が三十人、料理人が六十人という数だ、どう見ても人数が多すぎるという。この点は尤だ。
 宮内省改革はG・H・Qの意嚮だとふれて歩くものがある。これは困るとHusseyがいう。だが、国民といえども、上述のようなやり方には賛成しまい。これは是非とも整理しなければならぬ。

芦田均日記』(鶴見俊輔中川六平編『天皇百話』所収(386ー387pp))

4480022899天皇百話〈下の巻〉
鶴見 俊輔 中川 六平
筑摩書房 1989-04

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